02.01
下水管を腐らせ、道路を陥没させた恐怖のガスの正体とは?
埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没の現場では、事故が発生した2025年1月28日から4日目となる2月1日現在もなお、穴に転落した男性の救出作業が続いている。避難されている周辺住民の方々、下水道をいつも通りに使えない中で暮らしておられる方々もいる。一刻も早い救助と復旧を祈ります。
また、現場で救助にあたっておられる方々、生活排水があふれないように対応されている下水道関係者の方々をはじめ、対応されているすべての方々のご尽力に敬意を表します。
今回の道路陥没は、地下に埋まっている下水管が原因となった。下水管が腐食して穴が空き、地上の道路との間を埋めていた土砂が下水管に吸い込まれ続けた。やがて、下水管と道路との間に巨大な空洞が形成される。道路は土砂とアスファルトの薄い皮のようになってしまい、アスファルトや上部を通行する車両などの荷重に耐えきれず、崩れ落ちた。
下水管の多くはコンクリートで作られている。この現場も、そうだ。また、この現場にあったもののように大きなものになると、内部に鉄筋を入れて補強されている。地上にあるトンネルが、地下にもぐっていると言えばイメージしやすいだろうか。コンクリートは橋の材料になっていることからも分かるように、そうやすやすと壊れるものではない。
そのはずだった。
それなのに、なぜ、下水管は腐ってしまったのだろうか?

以前に筆者が取材した現場では、下水管の腐食が進み、内部の鉄筋がむき出しになっていた(八潮市とは関係ありません)
その原因物質は、下水に含まれる硫化水素と呼ばれるガスである。そう、「温泉のにおい」と言われて想像する、あのにおいの成分だ。
硫化水素が下水中にとどまってくれていれば大きな問題はないのだが、何らかの要因で下水が撹拌されると空気中に放出される。そうなってしまうと、ヤバい。細菌の餌食となり、硫酸に変化してしまうのだ。硫酸は非常に酸性が強く、ほとんどの金属を溶かしてしまう威力を持つ。こいつがコンクリートも溶かし、腐らせ、むしばんでいく。
では、硫化水素はどこからやってきたのだろうか?
硫化水素と硫酸を構成する元素の1つに、硫黄がある。温泉の源泉が湧き出し口のあたりが黄色くなっているのを見たことがある人も多いと思うが、あの黄色い物質が硫黄である。このことからも分かるように、硫黄は自然界に豊富に存在し、火薬やゴムなど多くの製品に使われている。
ニンニクや卵、肉、野菜などの食品、医薬品などにも、硫黄は多く含まれる。それらを私たちが食べると、一部は体内に取り込まれるが、残りはうんちやおしっことして下水道に排出され、やがて硫化水素へと変化する。工場から排出される硫黄もあるが、私たちもまた、硫黄の排出源なのである。
下水管は行政が管理するもの。自分には無関係。というより、そもそも今回の事故が起こるまで、下水道や下水管の存在を意識した人はほとんどいないのではないだろうか。しかし、私たちひとり一人が、日々の暮らしの中で硫化水素の元を排出している。下水管の腐食と無関係でいられる人などいないのだ。
では、硫化水素の発生を少しでも減らすために、私たちに何ができるだろうか?
まずは、台所から食品や食材を流さないこと。使った後のフライパンやお皿は、ウエスなどでふき取ってから洗う。こうすれば、洗剤と水の使用量も減らせて、さらにお得だ。捨てるタオルや洋服を小さく切った端切れを、台所に常備しておくといい。ラーメンの汁や油を流すのは、もってのほか。髪の毛やティッシュも流してはいけない。今一度、日々の何気ない行動を見直したい。
また、これまで下水道のメンテンナンスには予算が付きにくかった。なぜなら「問題なく使えているから」だ。だったら、教育や福祉に税金を投じてほしいというのが当たり前の住民感情である。でも、問題なく使えていても、実は腐り続けている下水管の存在に、私たちは気づいた。限りある財源を、何に使うのか。そのために、選挙でだれに投票するのか。一人ひとりが考えていく責任がある。
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